消えないタバコの臭い

嫌いでは無い。バイト帰りに阪急の終電に乗る。そこでいつも身体中から様々な種類の銘柄が混じったタバコの香りを強く認識する。それなのにいつも、同じ香りのような気がするのは何故だろう。タバコは数種混じると同じ臭いに辿り着くのだろうか。けれど、嫌いではない。むしろ好きかもしれない。タバコの煙はどうしても好きになれないのだけど、(むせるから。)臭いはよいと思う。タバコを吸う男はやはり格好良いと思ってしまう。なんでだろう。健康を代償にタバコを吸う勇気があるように見えるのかもしれない。僕は勝手にひとに対して男気を見い出し、勝手に惹かれる人間だ。最も本人達はそんなこと考えずにただ依存しているだけかもしれないのだけど。(他にも、露骨な言い方をすればバーでは会話が持たないからタバコを吸って時間を稼ぐ、と言うようなひとも実は多い。)もうかなり昔の話になるのだけど、唯一タバコを吸っていた元彼とキスしたときのタバコの香りは今でも強く脳に刻まれている。不思議だ。電車の中で身体中に染みついたタバコの臭いを感じながら、そんなことを思い出していた。それだけ。