散歩道

村上春樹の「アフターダーク」を一晩で一気に読み終える。時計が午前零時前を示す。犬の散歩に出る。実家に帰省してから毎晩深夜の犬の散歩が習慣になっている。僕の家の犬は夜行性だ。僕が玄関の扉を開けた瞬間、鎖が地面に擦れる音で、僕の居る方向へ寄って来ていることが分かる。僕が近づくと、尻尾を振り飛び跳ねる。いつものコースをとる。最短距離で公園を経由して、ぐるっと回って家へ帰るコースだ。まったくひととすれ違わなかった。新興住宅街なので、家々の合間を縫って歩いているのに。ただ、半数ほどの家々の窓からは灯りが溢れている。けど、ひとっこひとり視界には存在しない。なんだか奇妙な道のりだった。