kakenai

ああ、そうなんだな。と思うことで彼に対して全てを望まなくなってから、
ああ、そうなんだな。と思うことで生活に対して全てを望まなくなった。
世界に彩りが無くなったように感じるのは気のせいだろう。
しかし
ほんの小さな自制が、これほど僕の日常を安定させるとは知らなかった。
これも一つの発見だろう。
身体の内側から迸っていたパワーは消え、代わりに安息がやってきた。
ああ、そうなんだな。
僕は多分、ギリギリの世界の中で、完全な安息を求めていたのだろう。
手の中には大切なものが残り、
大切なものを得るために総動員されたエネルギーは役目を終え去った。
いや、
エネルギーが消え、大切なものが残ったのだろう。
何を不満に思う必要があるのだろう。
何故文句を言わねばならないのだろう。
だが
身体のどこかで、燻っているものがある。
僕は全てを望んでいるのだろう。けれど、望まないだろう。
火種は火種のままで。決して大きくは育てないだろう。
いつか、静かに消すだけだ。