「対岸の彼女」角田光代

ISBN:4163235108
秀逸。非常に楽しめた。オビには「区別」「立場が違う」「決裂」などと最近ブームな勝ち犬負け犬的な煽り文句が書いてあって購買意欲を煽っているけれど、却って小説に余計な先入観を抱かせる気がする。第132回直木賞受賞作。これこそ直木賞だ、と妙に頷いた。丁寧な心理描写、構成。消化不良な部分は想像力で補えば良い。
なんて言えばいいのだろう、なんにでも当てはまるのだけれど、たとえば僕と彼には12歳という年齢さがあったり、社会人や学生という立場の違いがあったり、まるで間に川が流れていて、彼が対岸にいるように思われるときもある。それでも僕は彼と一緒にいたいから川を渡って行きたいと思うし、彼にもこっちに来て欲しい。話が逸れた。
押し売りな感動ではなく、不思議と元気になれた。読みやすいので本を読むのが苦手なひとにも読んで貰いたい。